「気軽に会社訪問」をできるような仕組み「Wantedly VISIT」を提供しているウォンテッドリー(Wantedly)。2023年8月18日に通期業績予想の修正と初めての配当(初配)を公表したウォンテッドリー。通期業績予想から推定される4Qの売上高は11.4億円と3Qの11.8億円、2Qの12.1億円からの減少となる見込み。ストック収益の増加が鈍化しており、成長性の観点から株価が伸び悩んでいる。今後の株価と業績の行方はどうなるのか?
前四半期比で減収のウォンテッドリー、成長鈍化が株価に反映か?(2023年8月11日投稿)
「Wantedly VISIT」のウォンテッドリー、採用と従業員定着に貢献するビジネス!(2023年2月26日投稿)
■基本情報(2023年9月8日時点)
- 株価:1,490円(10年来高値:5,770円)
- 時価総額:141億円
- 予想PER:15.9倍
- PBR:4.87倍
- 予想配当利回り:1.34%
- 自己資本比率:71.8%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:994名(2022年8月31日時点)
■ウォンテッドリーの業績は?
ウォンテッドリーの2023年8月期の第三四半期の売上高は35.8億円(前年比+7.6%増)、営業利益12.3億円(前年比+30.5%増)の増収増益。ウォンテッドリーは売上総利益を公表していないため粗利はわからないものの、営業利益率が+34.3%(前年は+28.4%)と高く、また前年比で大きく改善している。
しかしながら、四半期の推移で売上高を見ていくと、ストック収益の伸びが鈍化し、オプションなどのフロー収益も前年割れの水準になっている。成長性の観点より株価が売られていると見てよいだろう。ウォンテッドリーは年間で広告費を約12億円くらい使っており、この広告宣伝費の使用加減で業績は大きく上下する。
■ウォンテッドリーの需給関係は?
ウォンテッドリーの大株主は、創業者であり社長である仲暁子氏が69.3%と約7割を保有。サイバーエージェントが8.8%、DeNAの川田氏が5.8%保有しており、上位3者で約84%を保有している。言い換えると、残り16%の思惑でウォンテッドリーの株価が大きく動く構造になっている。
そのような中、ゴールドマンサックスが10.4万株(約1.1%)、野村証券が8.9万株(約0.9%)を空売りしている。信用買いが約28万株(約3.0%)あるため、機関や個人投資家の思惑が大きく影響して現在の株価となっている。
■薄い内容の決算説明資料
ウォンテッドリーの決算説明資料をみると、事業別の収益などが開示されておらず、売上高のストック、フローの規模感、販管費の内訳くらいしか記載されていない。事業が好調なときはそれでもよいものの、ストック売上高の伸びが鈍化しており、伸びる雰囲気があるのかどうか残念ながらまったく探れない。
Webを活用した事業はクックパッドのように代替サービスによる過当競争など競争力が急になくなる可能性があり、それが一番怖い。伸びるときは一気に伸びるものの、突然死のように事業の存在感が一気に薄れる可能性がある。ウォンテッドリーの立ち位置がいまのところ見えない。
■財務データから見えるものは?
ウォンテッドリーの2023年5月31日時点の財務諸表をみると、現預金は34億円、敷金1.4億円。負債は契約負債(前受収益)が5.9億円で有利子負債はゼロ。利益剰余金が23億円まで積み上がっている。財務的には健全だ。
■今後の株価の行方は?
ウォンテッドリーの時価総額は約140億円。収益性を考えると、極めて割安だ。問題は成長性の鈍化。一時的な鈍化であるのか、構造的にビジネスSNSという領域がほかのサービスで代替されているのか分からない。この状況がわからないからこそ、ウォンテッドリーの株が大きく売られていると言えるだろう。
大株主のトップ3で全体の約80%以上の株式を所有しており、残りの少数株主の需給で株価は大きく変動する。
2023年8月18日の「通期業績予想の修正および配当予想の修正(初配)に関するお知らせ」で「営業体制強化のための取り組みを進めておりますが、来期については営業収益の成長は緩やかになる傾向が継続する見通しです。」と記載されており、2023年10月の決算発表では、成長性が大きく鈍化した業績予想がでると思われる。
以 上