医療・介護分野の人材仲介サービス展開のエス・エム・エス(SMS)、つづく高収益!M&A活用

 医療(看護師)・介護分野の人材仲介サービスや介護事業者向けの経営支援などを展開しているエス・エム・エス(以下、SMS)。人材不足がつづき、今後の超高齢社会に向けて需要がますます増加する分野(医療・介護)をターゲットに人材ビジネスや経営支援サービス、情報サイトなど多くのビジネスを展開しているSMS。成長率は前年対比1ケタの伸びに鈍化したものの、営業利益率15%を超える高収益がつづいている。今後のSMSの株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2020年10月30日時点)

  • 株価:3,070円
  • 時価総額:2,674億円
  • 予想PER:55.8倍
  • PBR:12.77倍
  • 予想配当利回り:0.27%
  • 自己資本比率:40.2%
  • 会計基準:日本基準

■SMSの業績は?

 医療・介護の転職サポートをはじめ、介護・医療・ヘルスケア・シニアライフ分野で情報サービスを展開しているSMS。SMSの2021年3月期の第二四半期の売上高は186億円(前年同期比+5.7%)、営業利益29.5億円(前年同期比+42.2%)と成長率は鈍化しているものの、営業利益は大幅な伸びとなった。SMSはセグメント別の営業利益を公表していないため、具体的にどの事業の営業利益が伸びているか把握できないものの、高収益率を支えているのは介護・医療(看護師)の転職サービスと思われる。

 SMSの長期の業績推移を見ると、しっかりとした右肩あがりの業績がつづいている。ここ数年は事業規模が大きくなった影響で、以前よりは成長率の伸びは鈍化している。

■SMSの事業領域は?M&Aを活用して拡大!

 SMSは医療・介護・ヘルスケア・シニアライフを事業セグメントとしている。決算説明資料を読むと、売上高の約70%を占める医療・介護の転職サービス(キャリア)と、売上高の約10%を占める介護事業者向けの経営支援サービス「カイポケ」が事業の中心だ。SMSはその他に多数の事業を行っているが、その多くはM&Aを活用して事業を獲得してきた。

 たとえば、2009年8月に看護学生向けの求人情報サービス「ナース専科」事業を約12億円で獲得。2011年8月には「認知症ねっと」、2011年9月には看護師向け通信販売「PURE NURSE」の事業会社を子会社化、2014年1月にはオーストラリアの事業会社を子会社化、2015年10月には東南アジア等で医療情報サービスを運営するMIMSグループの60%持分を約17億円で取得している。これら以外にも多数の企業や事業を買収している。

■若干気になるSMSの自己資本比率40%!?

 SMSの事業規模拡大の陰にはM&Aの活用がある。その結果として、2020年9月末の財務諸表をみると、自己資本比率40.2%と営業利益率を考えると、あまり高くない自己資本比率が気なる。SMSの財務諸表をみると、のれん96億円、商標権90億円、顧客関係資産17億円など合計すると無形固定資産が約220億円計上されている。適用している会計基準が日本基準のため、一定額を毎期、償却しているものの、事業規模に対する無形固定資産の規模は減損リスクを考えると、やはり気になってしまう。

■積極的な海外展開、芽は出るのか?

 SMSはM&Aを通じて、積極的に海外展開を進めてきた。現在では欧米、東南アジア、オーストラリアまで幅広く事業を展開している。海外事業の2021年3月期の第二四半期の売上高は18.9億円、前年同期に比べて約8%の減収(売上高減少)となった。事業の中心である介護・医療の転職サービスの成長率が1ケタに落ち込み、成長を支えているのは海外事業ではなく、前年同期で+22%売上高が増加している介護事業者向けの「カイポケ」だ。決算説明資料を読むかぎり、海外事業の行方は楽観的には伝わってこない。

■SMSの株価推移は?今後の行方は?

 SMSの株価は大きな上昇と下落を繰り返しながらも、上場来最高値圏にとどまっている。SMSの現在の時価総額は約2,700億円。SMSの営業利益額と利益率を考えると、割高ではない。ただし、株式相場の大きな動き次第ではここから大きく下落する可能性もあるので注意が必要だ。SMSに限らず、転職サービスを行っているエン・ジャパン、パソナ、パーソル、MSジャパン、JACリクルートメントなどの営業利益率は高い。その中でも介護・医療に特化したSMSは同業者に比べて、大きく将来の期待が株価に織り込まれている。その期待に応えつづけられる業績を出せるかが、株価の行方をにぎっている。

(画像5)右肩あがりのSMSの株価推移

以 上

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