再生可能エネルギーと新電力のイーレックス(erex)、JEPX価格の高騰の影響は?

 バイオマス発電を中心に再生可能エネルギーの発電事業と電力小売(新電力)事業をおこなっているイーレックス。2021年2月10日に公表した2021年3月期の第三四半期の決算発表で業績見通しの下方修正が行われると見られていたものの、当初見通しからは変更なしとなった。2020年12月中旬~1月中頃まで続いた日本卸電力取引所(JEPX)のスポット取引価格の高騰の影響はなかったのだろうか?イーレックスの業績と株価の行方は?

新電力のイーレックス、JEPXスポット取引単価が高騰!株価の行方は?(2021年1月11日投稿)

新電力事業者のイーレックス(9517)、バイオマス発電?再生可能エネルギーの行方は?(2020年9月27日投稿)

■基本情報(2021年2月12日時点)

  • 株価:1,837円(10年来高値:2,199円)
  • 時価総額:1,086億円
  • 予想PER:21.2倍
  • PBR:2.73倍
  • 予想配当利回り:0.97%
  • 自己資本比率:33.1%
  • 会計基準:日本基準

■イーレックスの業績は?

 イーレックスの2021年3月期の第三四半期の売上高は757億円(前年同期比+16.8%増)、営業利益69.3億円(前年同期比△3.9%減)の増収減益となった。すでに通期計画の進捗率は売上高は79%、営業利益は83%と順調な進捗を見せている。イーレックスの決算発表で今回注目されていたのは2020年12月中旬からはじまった日本卸電力取引所(JEPX)の電力卸価格高騰による影響だ。新電力のミツウロコは25億円の下方修正を実施し、ホープは通期計画を撤回、東京ガスは125億円の下方修正をおこなっている。いっぽう、グリムスは通期計画を維持。

 イーレックスは自社で再生可能エネルギーの発電を行っているものの、全体の50%程度をJEPXから調達していたため、今回は下方修正が出ると思われていた。イーレックスは自社で発電を行っていても、全体の20%~30%くらいしか自社発電でまかなえていない新電力会社だ。そのため、レノバ、エフオンなどの再生可能エネルギー銘柄の株価はここ半年で数倍に上昇したものの、イーレックスは再生可能エネルギー銘柄ではなく、新電力銘柄として扱われ、それほど株価は高騰してこなかった。

■イーレックスの2021年3月期4Qの影響は?

 イーレックスは決算説明資料のなかで「相対電源の一部見直しにより調達コスト改善」、「冬期に向けた相対電源を積み増しし、調達の安定化を図る」と下期の施策を記載している。イーレックスの現在の電源構成はJEPXで30%、自社・相対調達で70%と公表している。

 仮にJEPX調達(30%)部分が価格高騰の影響を受けていた場合、どのくらいのコスト増になるのだろうか?イーレックスの第三四半期の小売販売電力量は約844GWh(3か月間)。1か月分では281GWhと仮定する。その281GWhの30%がJEPX調達の場合は84.3GWhがJEPX価格高騰の影響を受ける。通常時の調達コストを5円/kWh、電力卸価格の高騰した1月平均を65円/kWhとすると差額60円/kWhのコスト増。影響額は約50億円のコスト増の計算になる。

 JEPX価格の高騰で反対に大幅な売上高増になっていると思われるのは、業績見通しを上方修正した北海道電力(+100億円増)、石油資源開発(+105億円増)の2社。政府などから新電力の救済という声も聞こえてくるため、新電力の経営問題が落ち着くまでは、たとえ価格高騰による利益増を見込んでいる会社があっても公表しにくい雰囲気ではないだろうか。

■イーレックスの株価推移は?

 イーレックスは2021年2月10日に決算を発表し、翌営業日は一時は+10%以上も株価上昇。イーレックスが今回のJEPX電力価格高騰の問題をうまく切り抜けたかは、いまのところ判断できない。イーレックスで新電力の業務を行っているのは連結子会社のエバーグリーン。

 エバーグリーンの出資比率はイーレックス77%、東京電力エナジーパートナーが23%となっている。東京電力グループをパートナーとして新電力事業を行っているため、価格高騰時に東京電力より優先的に電力を相当の価格で調達する契約があれば影響わずかということで理解可能だ。ただ、イーレックスの開示情報からは「相対取引の比率をあげているので問題ない」としか読み取ることができない。

(画像3)イーレックスの株価推移

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする