医療機関(病院)に経営支援システムを導入して月額利用料・保守費で利益をあげたり、二次利用許諾を受けた診療データを医療ビッグデータとして分析レポートとして販売しているメディカル・データ・ビジョン(以下、MDV)。2021年12月期の期初予想は保守的だったものの、第一四半期では売上高・営業利益とも前年同期比で大幅なプラスとなった。MDVの業績と株価はどうなるのか?
病院経営を支援するメディカル・データ・ビジョン(MDV)、オンライン診療への期待!(2021年1月31日投稿)
■基本情報(2021年5月14日時点)
- 株価:2,006円(10年来高値:3,525円)
- 時価総額:803億円
- 予想PER:98.2倍
- PBR:20.86倍
- 予想配当利回り:0.19%
- 自己資本比率:80.1%
- 会計基準:日本基準
■MDVの業績は?
MDVの2021年12月期の第一四半期の売上高は14.3億円(前年同期比+37.1%増)、営業利益4.5億円(前年同期比+98.4%増)の増収増益となった。MDVの売上総利益率は+81.2%(前年同期は+85.1%)、営業利益率は+31.8%(前年同期は+22.0%)と売上総利益率は悪化したものの、売上規模が大幅増となったため営業利益率は改善した。
売上好調の要因としては、歯科医向けのオンラインサービスを展開している子会社のDoctorbookが前年同期比+1.6億円の増収、もう一つは診療データ調査分析(アドホック調査サービス)が前年同期比+2.3億円の増収となった。医療ビッグデータであるデータ利活用サービス事業が6.4億円(20年1Q)から8.8億円(21年1Q)に大きく伸びている。案件数の増加と1件あたりの単価が増加と診療データ調査分析は好調だ。
■MDVの強みは?
MDVの事業のベースは病院経営システムの展開だ。たとえば、「Medical Code」という病院向け経営支援システムや「EVE」というコスト分析システムや病院経営のレポートサービスなどIT面で医療機関の経営をサポートしている。これらの病院経営支援システムを導入するときに診療データなどの二次利用許諾を受けている。これらの医療データ(さくらデータバンクという)をもとに、MDVは製薬会社や医療機器メーカーに調査データを販売するというビッグデータビジネスを行っている。
MDVの強みは、日本国民の4人に1人に相当する約3,500万人の医療データを保有している点だ。健保データも600万人規模で保有している。製薬会社や医療機器メーカーにとっては、とても貴重なビジネスデータとなり、MDVに診療データ調査分析を依頼するという流れにつながっている。
■SBIグループとの業務提携!
2021年4月12日に「SBI FinTech Solutions株式会社との業務提携に関するお知らせ」を公表。公表文書を読むと、医療機関(病院)に対するファクタリング(売掛金の買取)サービスを展開することを主な目的としている。MDVは医療機関と強い結びつきがあり、SBIグループは金融やITのノウハウを保有している。病院経営面での金融やITに関するサービスを展開していくと思われる。
もともと、2020年11月にSBIホールディングスとMDVは資本業務提携を結んでおり、SBIホールディングスはMDVの筆頭株主だった富士フイルムから19.8%の持分を買い取っている。SBIグループとしては、ヘルスケアと金融・IT(フィンテック)を結びつけて、付加価値のあるサービスを展開していく方針だ。
■MDVの株価の行方は?
MDVの株価チャートを見るかぎり、下落トレンドに入った可能性はある。MDVの時価総額は約800億円。株価指標的には割高感がある。しかしながら、MDVはSBIグループと資本業務提携しており、SBIグループは出資比率20%を超える筆頭株主。
SBIグループは2020年11月に富士フイルムから持ち株を取得していて、そろそろ含み損になっていると思われる。ここから株価が下がっていく場合、SBIグループの子会社化(出資比率50%超)への買い増しまたはTOBの可能性もゼロではないと見る。ただし、あくまで想定であり、現時点では様子見が無難ではないだろうか。
以 上