「ふるさとチョイス」のチェンジ、ふるさと納税は前年比倍増の勢い!

 ふるさと納税総合サイトの「ふるさとチョイス」を展開するトラストバンクの約70%を保有しているチェンジ。「ふるさとチョイス」以外にもさまざまな事業を展開しているものの、売上高の約85%を占めているのは「ふるさとチョイス」の売上だ。チェンジにとっては「ふるさとチョイス」に並ぶ主要事業を育てたいものの、なかなか次の柱の事業がでてこない。チェンジの業績と今後の株価の行方はどうなるのか?

「生産性をCHANGEする。」チェンジ(3962)、急成長と株価上昇!(2020年5月31日投稿)

「ふるさとチョイス」のチェンジ、ふるさと納税ビジネス好調つづく!(2021年2月15日投稿)

■基本情報(2021年5月28日時点)

  • 株価:2,987円(10年来高値:6,390円)
  • 時価総額:2,169億円
  • 予想PER:61.9倍
  • PBR:7.4倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:78.6%
  • 会計基準:IFRS基準

■チェンジの業績は?

 チェンジの2021年9月期の第二四半期の売上高は103億円(前年同期比+79.7%増)、営業利益53.2億円(前年同期比+88.9%増)の大幅な増収増益となった。チェンジの売上総利益率は+81.9%、営業利益率は+51.8%と高い。チェンジは10月~12月の第一四半期に「ふるさとチョイス」の駆け込み需要が入るため、毎年、第一四半期時点で年間のほとんどの売上高が計上されるビジネスモデルとなっている。

 同業他社で「ふるなび」を展開しているアイモバイルは前年同期比+23%増の状況をみると、チェンジは前年比+80%増近いため、「ふるさとチョイス」が同業他社のなかで、きわめて順調に需要を取り込んでいることがわかる。しかしながら、チェンジの事業は「ふるさとチョイス」の依存度が高く、新規事業の成長の芽が花開いていないことが大きな課題だ。

「ふるなび」運営のアイモバイル、ふるさと納税ビジネスはまだまだ伸びる!?(2021年3月13日投稿)

 チェンジは2018年11月に48億円でトラストバンクの約60%の持分を取得。2019年8月に約8億円で持分を追加取得し、現在は約70%のトラストバンクの持分を所有している筆頭株主だ。ふるさと納税ビジネスは、ソフトバンク系の「さとふる」、アイモバイルの「ふるなび」、楽天、ANAなど競合は多い。

■チェンジの「ふるさとチョイス」以外の事業は?

 チェンジは投資事業にも力をいれている。2021年5月13日時点で東証マザーズ上場のヘッドウォータース、AI CROSS(AIクロス)に上場前から投資をしている。未上場のAI関連企業のGAUSS、ドローン技術開発のエアロネクスト、DXコンサルのビービットなどに出資している。

 チェンジの決算説明資料をみると、IoT関連企業のビーキャップを子会社化した。ビーキャップはビーコン(Beacon)という機器とアプリを連携させて、位置情報サービスを展開している。ビーコンやセンサーの機器をベースに位置情報を取得して、連携アプリの情報を発信するもの。たとえば、特定エリアの店舗の情報発信・販促活動を支援したり、子ども・高齢者の在宅時の見守り、モノの紛失防止、倉庫などの屋内位置情報の管理、生産の活動状況の管理などに使用可能だ。GPSは衛星を活用したものであるが、ビーコンは専用機器を使用したもの。

 チェンジの前回資料ではエネルギー関連事業として、太陽光発電などの固定買取価格制度(FIT制度)を終えた卒FITに対するビジネス「えねちょ」を展開していくとあったものの、今回の説明資料では説明が一切なくなっている。チェンジのホームページをみると、人材育成、ロボティクス、AI、クラウド、IoT、ビッグデータ、サイバーセキュリティなど多角的に事業をおこなっている。

 正直なところ、事業領域やサービスが多すぎて、いったい何の企業かわからなくなる。チェンジの業績をみると、結局は「ふるさとチョイス」の企業と考えて問題ない。チェンジにとって、次の事業の柱をつくることが最重要課題となっている。

■想定外の増資!?今後の行方は?

 チェンジは2021年3月に約165億円(価格:3,077.2円)の増資を実行している。その増資により株価の希薄化は7.4%となった。増資の目的としては事業成長の加速だ。M&A資金として82億円、人件費増として29億円、システム投資に41億円を計画している。

 チェンジの強みは事業を創ることよりも、事業の成長性や収益性を見極める力。いまのチェンジがあるのはトラストバンクの子会社化の成功だ。約55億円でトラストバンクを子会社化したことにより、時価総額が成長し、今回の約165億円の資金調達につながっている。

■チェンジの株価の行方は?

 チェンジの時価総額は約2,200億円。すでに高値から半値まで株価は下落しているものの、この2年間の期間でみると急騰したあとの下落トレンドとみることができる。支持線である3,500円を割っており、ここから反発を期待するよりも様子見が無難だ。

 チェンジの中期経営計画では、2024年度には売上高500億円、営業利益160億円、従業員数1,500名を目指す計画だ。たった4年で事業規模や収益を約3倍にするという、とてつもない計画だ。実現できた場合は、確実にいまより株価は上昇しているだろう。この中期経営計画を実現する前提は、「ふるさとチョイス」に並ぶ事業を育てること。忘れてはならないのは、ふるさと納税事業は政府の政策に大きく左右されること。もし、ふるさと納税の政策がマイナス方向に転換された場合、チェンジにとって大きなマイナスになることは間違いない。

(画像1)チェンジの株価推移

以 上

 

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