「ベルメゾン」の千趣会、コロナ禍で巣ごもり需要取り込み!

 「ベルメゾン」を中心とした通信販売事業を行っている千趣会。ブライダル事業を手掛けていた持分法適用会社のワタベウェディングと連結子会社だったディアーズ・ブレインのそれぞれの株式を売却。債務超過に陥っていたワタベウェディングは興和に売却。これからは通信販売事業を中心に業績の立て直しに千趣会は取り組んでいく見通しだ。

■基本情報(2021年9月24日時点)

  • 株価:395円(10年来高値:995円)
  • 時価総額:206億円
  • 予想PER:16.1倍
  • PBR:0.55倍
  • 予想配当利回り:1.77%
  • 自己資本比率:64.4%
  • 会計基準:日本基準

■千趣会の業績は?

 千趣会の2021年12月期の第二四半期の売上高は379億円(前年同期比△10.2%減)、営業利益4.7億円(前年同期は△5.6億円の営業損失)と減収であるものの営業黒字に転換した。千趣会の売上総利益率は+51.3%(前年同期は+50.5%)、営業利益率は+1.2%(前年同期は赤字)となった。

 千趣会をはじめ、ベルーナ、スクロール、アイケイなどのカタログ通販をベースに発展してきた企業は広告宣伝費と荷造発送費の負担が重く、販管費に大きな費用が計上される構造になっている。千趣会も売上総利益が194億円あるものの、販管費190億円を計上して、営業利益は5億円弱となっている。

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■千趣会のビジネスは?

 千趣会の売上高構成の約8割を占めているのは通信販売事業だ。ベルメゾンネットやイイハナ・ドットコム、マンスリークラブネットなどで営業利益の中心となっている事業だ。

 ブライダル事業は第一四半期まで財務諸表に取り込んでいたため、2021年12月期としては売上高17.3億円、営業損失△10.5億円が影響している。来期以降はこのブライダル事業のマイナス要素が外れるため、それだけで大きく業績は改善する見込みだ。残りの事業は法人事業と保険事業があるが、千趣会の売上高構成としては非常に小さい。

■千趣会の通販事業は?

 千趣会はもともとカタログ雑誌をベースとした通信販売を行っていたが、時代の流れでデジタル化(ネット化)に移り、ECサイト経由での販売が増えていった。アマゾンやZOZOタウンなどが台頭するなか、千趣会は苦戦し、2017年と2018年に大規模な早期退職を実施している。

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 2020年12月期は売上高833億円、営業損失△3.9億円、経常損失△38億円という厳しい決算を発表したものの、コロナ禍で苦戦するブライダル事業を除くと実質的には黒字だった。

 千趣会の通販事業はなんとか業績を回復しており、売上規模は以前よりも小さくなっているものの、確実に利益を出せる事業モデルになっている。現在の会員数は約175万人となっている。ベルメゾンがターゲットとしているのは20代~40代の女性。ファッションから家具・寝具、生活用品までそろえている。ベルメゾンの売上総利益率も改善傾向となっている。

■千趣会の株価推移は?

 千趣会の時価総額は約200億円。一時は時価総額1,000億円ほどあったものの、Eコマースの発展により事業形態の変更に手間取ったことが株価下落の大きな要因だ。千趣会の中期経営計画としては、2025年12月期に売上高900億円、営業利益40億円を目標にしている。いまの事業モデルでは営業利益率10%を達成することは難しそうだ。

 カタログ通販をベースにした企業は苦戦を強いられ、千趣会と肩を並べていたニッセンは2016年にセブン&アイ・ホールディングスが完全子会社して上場廃止している。

 千趣会が営業利益率10%を達成するには、いまのビジネスモデルからの脱却が必要かもしれない。従業員約900名を抱える大企業であり、古い考えを変えて、新しいEコマースに転換できるか引き続き注目したい。なお、JR東日本と資本業務提携をしており、JR東日本は千趣会の10.9%の株を所有する筆頭株主である。第2大株主は9.8%保有の自社となっている。

 

(画像1)千趣会の株価推移

以 上

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