クラウド型POS・タイムカードのスマレジ、どこまで市場は拡大するか?

 iPadなどを利用したクラウド型のPOSや決済サービス、タイムカードなどのサービスを提供しているスマレジ。77万店舗の中規模の小売店・飲食店をメインターゲットに38%のシェア取得を目指す。顧客としてはエレコム、とらや、靴下屋などの小売店・アパレル、パルコ、カプリチョーザ、千疋屋などの飲食店にも利用してもらっている。今後のスマレジの業績と株価の行方は?

クラウド型POSレジのスマレジ、事業は堅調であるも株価低調に!(2022年2月27日投稿)

長期ビジョン「VISION 2031」発表のスマレジ、3年間は減益覚悟の投資!(2021年6月13日投稿)

■基本情報(2022年12月23日時点)

  • 株価:1,677円(10年来高値:4,395円)
  • 時価総額:329億円
  • 予想PER:79.6倍
  • PBR:7.46倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:79.0%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:3,648人(2022年4月30日時点)

■スマレジの業績は?

 スマレジの2023年4月期の第二四半期の売上高は26.4億円(前年同期比+37.5%増)、営業利益4.0億円(前年同期比△8.0%減)の増収減益。スマレジの売上総利益率は+61.2%(前年は+63.4%)、営業利益率は+15.0%(前年は+22.5%)。

 表面上は減益になっているものの、スマレジのビジネスモデルを考えると粗利(売上総利益)の増加に注意が必要だ。スマレジの売上総利益は16.2億円と前年の12.2億円から+4.0億円の増加となっている。いっぽう、販管費が7.9億円→12.2億円と+4.3億円の増加になったため、差し引きで減益という結果になった。ただ、サブスクリプションモデルであるため、広告宣伝費などを投入しても事業規模の拡大がスマレジにとって最善の戦略であるため、粗利の堅調な増加は確実に成長している確認となった。

■スマレジの事業状況は?

 スマレジは2020年のコロナ感染拡大時には売上高が微増となり成長が止まったように見えたものの、アフターコロナで大きく成長していることが確認でき、成長段階であることが再び確認することができた。

 営業利益率は従来の+20%台から15%前後に下がっているものの、成長投資(広告宣伝費など)を優先しているためであり、利益率悪化の理由は明確だ。スマレジのサブスクリプション売上高比率は57.7%と従来からほぼ横ばい。機器販売が約4割という構造は変わらない。心配されるのは、新規顧客の増加が止まると機器販売の部分が剥落することだ。

 スマレジの従業員数は232人。そのうち、エンジニアは59人と意外に少ない。もっとも人数が多いのはセールス・マーケティングの人員で81人。カスタマーサポートは55人となっている。コロナ前の2019年は従業員数が86名だったため、すでに3倍くらいまで従業員数が増えている。

■ロイヤルゲートの買収効果は?

 スマレジは2021年12月に大和ハウス工業からロイヤルゲートの株式を買収しており、取得割合は99.9%となっている。2022年4月に吸収合併することでロイヤルゲートはスマレジに吸収される形となった。

 ロイヤルゲートの取り込みにより、決済サービス「PAYGATE」と接続することで、クレジットカードや電子マネー、QR決済などを1台の端末で処理できるもの。いわゆる、小売店・飲食店での決済端末を提供している。この決済端末も有線ではなく、WiFiなどのネット環境で利用できるため、飲食店での座席での決済も可能だ。月額費用は3,300円。

 このロイヤルゲートの買収により、2023年4月期の第二四半期の売上高は1億円ほど前年比で嵩上げされていると思われる。

■増える取引高!

 アフターコロナでリアル店舗である小売や飲食店の売上規模は回復基調になっている。全国旅行支援やGo Toイートなどの政策やこれからは海外からのインバウンド旅行者の増加も見込まれる。

 2023年4月期の1Qの流通取引総額は3,600億円、2Qは3,800億円と大きく回復している。正直、リアル店舗では多機能な決済端末が一般的になっており、ロイヤルゲートの買収効果が今後、でてくるものと思われる。現在の現金取引の割合は約50%、キャッシュレス取引(クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など)も約50%と均衡している。今後はキャッシュレス取引がどんどん増えてくると思われる。

■スマレジの登録店舗数は?

 スマレジの登録店舗数は11.8万店舗(前年同期は10.3万店舗)、有料店舗数は2.7万店舗(前年同期は2.2万店舗)と増加傾向が続いている。有料店舗率は22.5%(前年同期は21.1%)と少しずつ上昇傾向がみられる。

 そして、2023年1月より価格改定を実施する。ほぼ10%~25%くらいの値上げを公表している。スマレジは解約率が非常に低いため、これから利益率が大きく上昇する可能性がある。

■スマレジの財務状況は?

 スマレジの2022年10月末時点の財務状況をみると、現預金は36億円。いっぽう、有利子負債はゼロで極めて健全な財務状況になっている。計上されている、のれんも91百万円と小さく、スマレジの事業規模からすると影響規模が小さい。

■スマレジの株価推移は?

 スマレジの時価総額は約330億円。高値から半値以下まで下落したものの、前年比+30%を超える成長をしており、いまだ成長していることが確認できたため、割高な株価ではない。ただ、米国をはじめとした利上げの影響により、特にグロース銘柄の株価に向かい風であることは間違いなく、コロナ禍とは異なる株式評価(バリュー)になる可能性がある。

 金融緩和をしている中であれば、マーケットがお金の行く先を探して、割高な株価をつけることがあったが、これからは控えめな評価になる可能性があることに留意が必要だ。スマレジの2023年4月期の売上高は55.9億円、営業利益6.5億円を計画している。有料店舗が倍増すると売上高は100億円、売上総利益は60億円、販管費20億円、営業利益40億円くらいは可能だろう。

 逆算すると、有料店舗数が4万店舗になるには登録店舗数が20万店舗(現在は11.8万店舗)くらいは必要だ。それが実現できるのかどうか?感覚的には、ある程度の店舗には決済端末などが導入されており、スマレジがさらに普及する余地があるのか見極めが必要だ。

(画像1)スマレジの株価推移

以 上

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