入退室管理システム「Akerun」のフォトシンス、売上規模がまだ小さい!

 入退室管理システム「Akerun」を展開しているフォトシンス(Photosynth)。最近ではスマートロック「Akerun」のほうが知名度があるかもしれない。会社名をなぜAkerun(アケルン)に変更しないか気になるところであるものの、世の中でAkerunを採用している場所が増えている。ただ、比較的、規模の小さな会社や個人事業主がオフィス、24時間トレーニングジム、コワーキングスペースなどで使用しているイメージ。今後の業績と事業の行方は?

スマートロック「Akerun(アケルン)」のフォトシンス、成長の行方は?(2023年3月5日投稿)

入退室管理システム(スマートロック)の「Akerun」、フォトシンス上場!(2022年1月16日投稿)

■基本情報(2023年5月26日時点)

  • 株価:399円(10年来高値:1,526円)
  • 時価総額:62億円
  • 予想PER:ー(赤字予想)
  • PBR:3.01倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:59.7%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:7,942人(2022年12月31日時点)

■フォトシンスの業績は?

 フォトシンスの2023年12月期の第一四半期の売上高は5.7億円(前年同期比+22.8%増)、営業損益△55百万円(前年は△2.1億円)の増収赤字悪化の結果となった。

 フォトシンスの売上総利益率は+84.9%(前年は+89.1%)と悪化傾向となった。売上総利益率の悪化理由としては、サブスクリプション売上比率が下がったことと、賃貸用資産の償却費の増加が大きな要因とのこと。ただ、売上総利益率が80%台で推移していることはプラス面であることは変わらない。

 フォトシンスの売上総利益は前年同期4.1億円→4.8億円と+0.7億円の増加、販管費は前年同期の6.3億円→5.4億円と△0.9億円の減少となった。販管費減少の理由としては、広告費や採用費の圧縮・減少が要因と決算説明資料に記載されている。

■フォトシンスの事業状況は?

 フォトシンスの広告費は年間で約4億円。これから事業拡大するタイミングで、あえて広告宣伝費を削っている理由はよくわからない。予想以上に業績が悪化しているのか、目先の損益を気にするようになったのか。

 ただ、販管費で目立つのは人件費・業務委託費用の減少だ。2022年1Q時は3.6億円だった人件費ほかが、2023年1Q時は3.3億円と約0.3億円の減少となっている。2022年2Qに正社員数のピークとして181名となった後、2023年1Q(今回)は165名と△16名の減少となっている。全体の約10%が退職した形だ。成長企業での人の入れ替わりは多いものの、10%も退職するのはイレギュラーだ。

■契約社数は5,000社を突破!

 フォトシンスの契約社数は、2023年3月末時点で5,068社と5,000社を突破。ただ、社数と書いているものの、個人事業主など法人ではない小規模のところもかなり多いのではないだろうか。

 2020年1Qは2,964社、2021年1Qは3,577社(+613社)、2022年1Qは4,569社(+992社)、2023年1Qは5,068社(+499社)と推移している。ただし、伸びている会社数でカウントすると、2023年1Qは大きく鈍化していることがわかる。もちろん、小さな契約も大きな契約も1カウントしているため、金額換算ベースではわからないものの、成長が大きく鈍化していると言えるだろう。

■フォトシンスの財務状況は?

 フォトシンスの2023年3月末時点の財務諸表をみると、現預金は16.6億円、有形資産10.3億円が大きい。気になるのは「賃貸用資産」が仮勘定含めると10億円くらい計上されている。おそらく、「Akerun」のハードウェアをフォトシンスで購入して、顧客に貸し出しているものと思われる。

 フォトシンスの有利子負債は約3.8億円ほどと大きくない。フォトシンスは2021年11月の上場時に約18億円を調達しており、資金的にはまだ余裕がある。

■フォトシンスの株価推移は?

 フォトシンスの時価総額は61億円。ITサービス系企業のSaaSモデルの会社としては時価評価が低い。成長をつづけるSaaS企業と異なり、成長性の鈍化が投資家から嫌がられているのではないだろうか。フォトシンスの「Akerun」のターゲットは小規模企業または個人事業主が多いと推測しており、大規模企業は日立、パナソニックなどの大手の製品を導入するケースが多いのではないだろうか。

(画像1)フォトシンスの株価推移

以 上

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