クラウドソーシングサービスの「Lancers」を運営しているランサーズ。これまで赤字で苦しんできたものの、ようやく黒字化の目途が見えて、株価も少しずつ上昇中だ。今後の業績向上でどこまで株価は上昇するのだろうか?
クラウドソーシングのランサーズ、撤退事業除きでは順調な成長に!(2022年9月4日投稿)
■基本情報(2023年6月30日時点)
- 株価:293円(10年来高値:1,638円)
- 時価総額:46.4億円
- 予想PER:122倍
- PBR:4.84倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:31.1%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:5,901人(2023年3月31日時点)
■ランサーズの業績は?
ランサーズの2023年3月期の流通総額は113.5億円(前年比+9.8%増)、売上高48.1億円(前年比+18.0%増)、営業損益は△2.5億円(前年は△3.7億円)の増収赤字幅の縮小となった。ランサーズの売上総利益率(流通総額比)+20.0%(前年は+19.4%)と若干改善傾向となった。
ランサーズの売上総利益は前年の20.0億円→22.7億円と+2.7億円の増加、販管費は前年の23.7億円→25.2億円と+1.5億円の増加となり、差し引きで営業利益は+1.2億円の改善となったものの、営業損益△2.5億円で着地している。
■悩ましい売上総利益と販管費の比率
ランサーズの過去の業績推移をみると、2021年3月期はセグメント利益をマーケットプレイス事業を中心に出しているものの、全社共通費用をカバーできずに、わずかな利益にとどまっている。
2023年3月期の4Qにようやく営業利益が黒字になったものの、またしても費用増で赤字になってしまうのではないかという懸念がある。過去の流通総額推移をみると、右肩上がりで流通総額は増えているものの、テイクレートが20%前後とそれほど高くなく、なかなか利益がでにくい利益モデルであることは間違いない。
2023年3月期の4Qが営業黒字になったものの、売上総利益と販管費のバランスをみると、販管費削減の効果のほうが大きい。広告宣伝費、地代家賃、人件費ともに削減している。具体的には、2022年4Qの販管費は6.6億円、2023年2Qは6.7億円、2023年4Qは5.7億円と1億円ほど販管費を削減している。
■その他のKPIは?
ランサーズのクライアント数をみると、2023年3月期は359百社(前年は379社、前々年は363百社)とクライアント数は減少している。いっぽうで、利用金額は増加傾向にある。ただ、利用金額の増加理由は、ワークスタイルラボ社の買収によるところが大きい。
2022年6月14日にランサーズがワークスタイルラボ社をドリームインキュベータから買収しており、その分の嵩上げ分が2023年3月期は影響している。年間売上高で10億円ほど嵩上げされる計算になる。
なお、ワークスタイルラボ社はプロフェッショナルサービス(フリーコンサルタント)を紹介するシェアリングサービス事業を行っている。上場企業であれば、サーキュレーションと同じ領域だ。POD(Professionals On Demand)を運営している。その他にはギークスやブランディングエンジニアも同じような領域のビジネスを展開している。
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■ランサーズの財務状況は?
ランサーズの2023年3月末の財務諸表をみると、現預金は13億円、のれん4億円、ソフトウェア4億円が主な資産。負債をみると、有利子負債は約4億円、未払金3.7億円、預り金7.4億円となっている。財務的には健全な範囲だ。
ランサーズのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは△3億円のマイナス、投資CFは△3億円のマイナス、財務CFは長期借入金3.3億円により+3.2億円となり、現預金の増減は△3.1億円となっている。
■ランサーズの株価の行方は?
ランサーズの時価総額は約45億円。表面的には業績が回復しているように見えるものの、ワークスタイルラボ社の買収による一時的な売上増と販管費削減のものと考える。プロフェッショナルシェアリングサービスも競争が激しく、いきなり稼ぎ頭になることはないだろう。引き続き、様子見が無難だ。
以 上